
TALKING ABOUT DRESS SHOES|REGALと考えるドレスシューズの未来
REGALとROPÉがタッグを組んで製作したドレスシューズを紐解くべく、REGALの靴作りにリーガルコーポレーションのスタッフとROPÉのデザインチームの対談が実現。
なぜ、今女性のためのドレスシューズを提案するか?ドレスシューズの過去と未来、今回のコラボレーションにおける制作秘話を語った。
photo: Mayumi Hosokura
edit: Sakiko Fukuhara
text: Aika Kawada

座談会参加メンバー
(写真左から)
佐藤詩恵さん(ROPÉデザイナー)
宇野友康さん(ROPÉ製造)
田中千聡さん(REGAL Ladies’ MD)
濵田剛さん(チヨダシューズ製造部長)
丸山睦さん(リーガルコーポレーション デザイナー)
—REGAL×ROPÉの取り組みが始まったきっかけは何だったのでしょうか。
佐藤さん(以下S)「ROPÉ」のリブランディングをするにあたって、一度「ROPÉ」のこれまでの歴史を紐解きました。1968年で「REGAL」ブランドも1961年と同年代にスタートされていて、互いに日本のファッション産業を支えてきた歴史があると知りました。さらに新しい技術や素材をどんどん取り入れて新しい取り組みがストイックに進化していったことも伺い、いま一緒にものづくりをしたらどんな靴が出来上がるかを見たいと思ったんです。それに、「ROPÉ」というブランドのスピリットにはマニッシュな部分もあるんです。ブランド設立当初は男合わせのジャケットを展開していたので、メンズシューズを取り入れるのは自然な流れでした。
田中さん(以下T)お声がけいただき、とても驚きました。昨今、お客様のマインドは靴の履きやすさや軽さに向かっていると感じています。洋服もカジュアル思考の中、弊社は今回の様なクラシックな“きれいめ”のシューズを積極的に提案できていませんでした。本来はそういったアイテムを生産できる環境がある中で、ブランドとして強みの部分のはずなのに、ニッチなニーズだといえ新たな取り組みができていませんでした。でも今回、ROPÉさんからファッションとしての面白さを靴を通して提案したいとお話しをいただいて。クラシックなドレスシューズに可能性を見出してもらい、私たちもはっとさせられました。
—いま、ROPÉ がドレスシューズを提案する理由は?
S ROPÉ のエレガントなスタイリングを提案する際に、どうしても革紐靴が必要でした。その際にせっかくならば「この靴を持っていれば大丈夫」と言えるアイテムを作りたかった。また、REGALさんから革紐靴も軽くて履き易く進化していていると学び、我々もそのことを商品を通して伝えていきたいと思ったからです。
—REGAL×ROPÉのコラボレーションシューズの特徴を教えてください。
S 一言で言うと、「軽さとお手入れを簡単にした、履き心地の良いエレガンスなシューズ」です。日本のブランドらしい丁寧な作りと素材へのこだわり、上質な革や伝統的な製法、日本人の足にあった木型を持つREGAL社と日常にハレの気分を取り込みエレガンスの進化を目指すROPÉのクロスオーバーだと思います。注目すべきディテールは、まず「①スマートな見た目の美しさ」、それから「②ベルベットリボンの靴紐の遊び心」。そして「③足を入れた瞬間のクッション性と軽さ」と「④つま先に、自然回復する特殊な革を採用している」ことです。
—一方で、現在のシューズ市場にはどのような傾向があるのでしょうか。
丸山さん(以下M)メンズでいうと、スーツにはネクタイと革靴を合わせるのが常識だった時代から、大きく変化しました。ビジネスシーンに必要とされていた革靴でしたが、現在は無理してはかなくていい快適な革靴が求められています。これまでは、履き心地が悪くても、見た目やTPOのために履くことが求められていました。ビジネスシーンに、よりリラックスしたスニーカーを履く人が増えています。そういう方々に革靴の良さを再発見してもらいたい。社内でも試行錯誤しているところなんです。
T レディース市場も、季節にとらわれないスニーカーなどのアイテムに需要がある一方で、パンプスは以前ほど需要が高くない状況です。革靴業界だとラギッドソールのアイテムなど、軽くて少しボリューム感があるものが主流になりつつある印象です。その分、昔からある様ないわゆる“きれいめ”なシルエットは、逆に新鮮に感じる方も多いと思います。今回いただいたご提案もそうで、主流じゃないからこその新しさを感じるのではないでしょうか。
宇野さん(以下U)工場見学をさせていただき、基本のキとなるような丁寧な靴作りを続けられていると思いました。REGALさんの良さをよく理解した上で、いまの時代にあったものを作っていくのがいいのではないかと思いました。

—スニーカーが主流となっている今、革靴の魅力は何だと思いますか。
T 革の耐久性、長く履いていただくことを想定した靴作りだと思います。あとは、足元にきちんとした感じを出せるというのは革靴の強みです。
M 革が伸縮するので履く人の足に馴染むというのも魅力。あとは、身に付けることで得られる満足感もあると思います。いいものを身につけると、テンションが上がりますよね。
—女性用のドレスシューズを製作する上で、工場内で行った新しい挑戦はありましたか。
T 弊社では、メイドインジャパンの本格的なアイテムのシリーズをプレミアムラインと呼んでいます。アッパーが革でガラス加工がしてあるツヤ感のあるものが中心で、レザーソールの本格派も展開しています。レディースはレザーソールが主流ではないので、軽くて柔らかさがあり耐久性も優れるVibramソールを使いました。プレミアムラインでVibram ソールのものは初めて。スクラッチタフレザーもメンズでのみ使っていたので、初めてレディースアイテムに使いました。シューレースもベルベッドのものが付属され、通常のシューレースよりも手が込んでいます。これまでに使ったことがなかった素材で、初めての試みでした。
M 硬めのレザーソールではなく、Vibramソールでよりクッション性が増しています。クラシックな部分と新しいものが共存しています。
S Vibramソールにすることで靴底に厚みが出て、見た目も今っぽい仕上がりになっていると思います。裏材も牛革を使っているので長持ちし、天然素材ならではの通気性があり、長年履くとで馴染んでいくという特徴があります。何より内側まで見栄えがいい高級な素材を使っています。裏も表も牛革なのは、婦人靴では珍しいことです。
—今回使用した傷ができにくい素材、スクラッチタフレザーについて詳しく教えてください。
M 特殊な塗料でコーティングした革のことです。最初は車用として、石が当たっても傷がつかない塗料として開発されました。その後、傷がつきにくいスマートフォンのケースに応用され、それを靴の革にも使えないだろうかということで開発された素材です。ちょっとした引っ掻き傷くらいなら自動修復されます。本来は伸縮性がないものに使われているので、革に使うことで特許技術となったんです。今回のシューズはつま先だけに使用しているので、通気性にも支障はありません。「革靴は傷が気になる」というお客様の声に応えられたと思っています。
—コラボレーションシューズを作る上で、難しかったことは何ですか。
濱田(以下H)スクラッチタフレザーの扱いは岩手工場がメインなので、新潟工場では初めて使いました。取り入れるにあたって、まずは岩手工場から情報を仕入れることから始まりました。熱を加えると壊れやすい素材だと聞いて、専用のパッドを作って、つり込む際に革へ負荷を与えないように気を配りました。
T スクラッチタフレザーはつま先のみの使用で、つま先以外は他のレザーを使っているため、少し色のコントラストが出てしまうんです。なので、色のコントラストを出さないように調整をするのが大変でした。社内に企画のチームと製造のチームがあるんですが、何度か話し合いをしました。一回サンプルを作ってもらって、色のコントラストの修正ができるかというやりとりもありました。ソール自体も今まで使用していたものより柔らかいので、靴にねじれが出ないような調整もありました。
—メンズシューズをベースに、レディースシューズを作る上で工夫したことは何でしょうか。
T そもそもメンズの方がレディースに比べてワイズが広いという特徴があります。革靴で言うと、おおよそメンズの23cmはレディースの24cmにあたることが多いです
M 23cmの女性が履いても問題ない設計にはしました。ただ、ROPÉさんが選んだ木型にすごく驚いてしまって。正直、「本当にこれでいいのか。だいぶ男性ものの印象が強いモデルだけど」と思いましたね。女性用として考えると、縦に長いデザインなんです。リクエスト通りメンズの木型をベースにして女性用の木型を作りましたが、女性の視点で見ると若干つま先が長く感じるかもしれません。
S 選んだ木型については、メンズのシューズをベースにしたかったのです。クラフトマンシップも技術もいい素材もあるので、女性用のドレスシューズがあったら良いなと思いました。さらに、せっかく今作るのであれば、新しい素材や技術も取り入れたいと相談しました。ROPÉの60、70年代のスーツルックはギャルソンヌやかつてのサンローランのミューズのような、男装しているかのような女性像を描いていました。その時代に履いていた靴が、ドレスシューズみたいなデザインだったんです。そこから自然とコラボレーションの話となりました。

—メンズシューズのつま先が長い理由は?
T メンズに関しては、足が少し大きく見えた方が全体のバランスが良く見えるという感覚があるように思います。
M 特につま先を細長くするとスマートに見えるという若い方からの需要があった時期はありました。バブル後でしょうか。むしろバブル中は、先が短くて華奢なものが好まれていました。最近は、またスニーカーブームもあって、先の短い靴が好かれています。
—付属のシューレースについて教えてください。
T 今回は一番オーソドックスな平紐に、気分で変えていただけるベルベッド素材のシューレースが付属しています。シューレースは目が細いものだと綺麗めな印象になり、目が粗くて太いものだとカジュアルな印象になると考えられているんです。今回のベルベッドのシューレースは少し苦戦しました。素材的に切れてしまわないかといった懸念や、先のプラスチックの部分が弾けないかなどの心配要素が多々ありました。でも、サプライヤーの方が挑戦してくれ実現しました。
S ベルベッドを選んだ理由は、男性が身につけられないものを女性向けにファッションとして提案したいと考えたからです。そういった意味でアイデアを出しました。あと、メンズに比べるとだいぶ足幅が細いですよね。このエレガントさといいバランスが取れそうな素材だとも思っていました。シューレースが一番足元の表情に変化をつけやすいかもしれませんね。
T シューズの世界でも、革のツヤ感がある素材は女性ものになる傾向があります。エナメルとかも、男性が手を伸ばしにくい素材ではあります。ドレスアップ感が強まる、女性っぽいものという印象がある気がします。今回もツヤがかなりあるガラスレザーを使用しています。

—かかとに付いている、四角いヌメ革は何ですか。
M プレミアムライン全てについているアイコンです。REGALの中で特別なラインの印です。「特別なものを作ろう」となったとき、デザインが突飛なのではなく、シンプルだけどいい仕立てで素材の靴にしたかったんです。
U つまり高級品を履いているさりげない証で、クリスチャンルブタンのレッドソールみたいなアイコン。履き続けると革の色が変化していく楽しみもあって、愛着も深まりまそうですね。

—ソールと中側のステッチを赤色にした理由は?
Y 見えないところのおしゃれの楽しみとして、裏糸にだけ赤い糸を使っています。裏を目立つ色で縫うのは、高い技術がないとできないと聞いています。ステッチの細かさにも注目していただきたいです。細い糸を使い、細かいピッチで縫っているため、縫い目の表情に繊細さがあります。これは今回の企画のテーマとして目指したところ。縫い目が荒くなると、メンズっぽさが出てしまうんです。
U 下糸は縫っている時に見えないですからね。テンションの合わせに気をつかわれたのではないでしょうか。
H はい。縫い目がまっすぐ揃っていないと、どうしても目立ってしまう糸の色なので。さらに表糸でなく裏糸だと、かなり慎重に糸の調子を合わせてまっすぐ縫わないといけないんです。
T こういったデザインは初めてですが、女性用のドレスシューズにぴったりだと思いました。基本はベージュか黒が多く、靴を脱いだ時に中が赤いと華やかな雰囲気がでると感じました。
—適切なお手入れ、保管の仕方を教えてください。
M 基本的には乾拭きをするだけで問題ありません。丁寧にお手入れしたいときは、靴底とアッパーの間にホコリが溜まりやすいので、軽くブラッシングをしていただくこともおすすめします。
T 修理に関しては弊社直営店のREGAL SHOESに持ってきていただけましたら、状態を見て対応させていただきます。今回はマッケイ製法で作っているため、ソールの交換ができます。
—このドレスシューズには、どんなスタイリングがおすすめですか?
S 王道のスーツ合わせはもちろんですが、春や秋の必須アイテム、トレンチコート、ブレザー、デニム合わせ、ROPÉのフレアスカートやスラックスをエレガンスなスタイリングにしてくれるアイテムです。合わせるもの全てのスタイリングのエレガンスを一つ上に持ち上げてくれるシューズです。
REGAL×ROPÉ ドレスシューズ
price: ¥49,500(tax in)
size: 23.0cm/23.5cm/24.0cm/24.5cm/25.0cm
* 23.0cmは公式オンラインストア限定サイズ
【ROPÉ】全国の「ROPÉ」直営店舗および公式オンラインストアにて2月26日(水)より発売開始
【REGAL】REGAL SHOES 銀座数寄屋橋店(直営店舗)とREGAL公式オンラインストアでも同時発売