SPECIAL SHORT ESSAY

SPECIAL SHORT ESSAY 女を育む、服

エディター・ライター 松本 千登世

ESSAY 19

ROPÉ / ROPÉ mademoiselle / ROPÉ ÉTERNEL

女性像を着替える、女たち

「これまで、口紅を手に入れるときに、もし、お気に入りの候補が3本あったら、迷って迷って1本を厳選していたんですね。ところが、今は違うんです。迷ったら『じゃ、3本とも買います』って……」。ある化粧品ブランドのPRの女性に聞いた話。正直、驚かされた。「口紅」が今、私たちの想像以上に、売れに売れているという。あれだけ難しいと避けられていた赤が、もはや「ベージュより簡単」と言われるまでに、女性たちの日常にすっかり定着。それどころか、赤が当たり前になったら、今度は、もっと高度なフューシャやプラム、ブラウンなどの主張の強い色にも躊躇なく手を伸ばしているという。さらに、ベージュも「守り」としてでなく、むしろ「攻め」の色と捉えて、新しい表情を楽しんでいる女性たちも多いと聞く。それだけじゃない。艶もマットも、シアーもティントもと質感のバリエーションも充実しているから、その微差を使い分けたり、複数の色や質感を重ねる「リップ オン リップ」に挑戦したり。みんな、リップメイクそのものに夢中になってる。ああ、こんな時代がやってくるなんて!

かつて、「○○の○番」と、10人が1本の口紅に群がった時代があった。やがて、「『私』に似合う1本に出合いたい」と、10人いれば10本の口紅を求める時代になった。そして、今。ひとりが10本の口紅を楽しむ時代へと進化した。たとえ自分に似合う色であっても、来る日も来る日も同じでは飽き足らない。今日はこの色、今日はこの色と、日替わりの自分を楽しみたい。それは、デニムにはこれ、ドレスにはこれ、というような「使い分け」とは違う、もっと大胆で、もっと聡明で、もっと軽やかな「演じ分け」みたいなもの……。そう、女性像を着替える、そんな時代がやってきたのだ。

洋服なら、なおのこと。たとえば、コートは最たるものだろう。今年の「一枚」と定める時代はもう終わったのだと思う。知性と清潔感を兼ね備えた、洗練のエレガンスを纏える、ロペのカシミアツーウェイコートも。品のよさと遊び心を絶妙にブレンドした、フレンチモードを纏える、ロペ マドモアゼルのビッグカラーメルトンコートも。上質でシンプルな美しさと朽ちることのないタイムレスな生き方を纏える、ロペ エターナルのアルパカウールシャギーローブコートも。まるで女優のように、自分を演じ分けるためには、どれも欲しい。そのコートを着ることによって姿勢や表情が変わる自分を楽しみたい、そんなムードなのである。
今日はどんな女を演じようか。今日はどんな美しさを楽しもうか。口紅にコートにわくわくするのは、今日の自分にわくわくすることに等しいのだと思う。そんな女性は、まわりをもわくわくさせ、結果、吸い寄せる。これが、今という時代の、女の最上級。


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松本 千登世

松本 千登世CHITOSE MATSUMOTO

客室乗務員、広告代理店や出版社勤務の経験を経た後、フリーランスの美容ライターに。
自らの経験をもとに語られる、エッセイや美容特集は常に世の女性たちの注目を得ている。
著書に、『美人に見える「空気」のつくり方 きれいの秘訣81』(講談社)や、
『結局、丁寧な暮らしが美人をつくる。今日も「綺麗」を、ひとつ。』(講談社刊)などがある。