SPECIAL SHORT ESSAY

SPECIAL SHORT ESSAY 女を育む、服

エディター・ライター 松本 千登世

ESSAY 13

「さじ加減」を楽しむ、女たち

その日は、「美のプロたち」による対談取材。今シーズンのトレンドであるピンクについて、スタイリストとヘア&メイクアップ アーティストに、それぞれの解釈を聞いていたときのことだ。「じつは、ね。唇をピンクにしたときに、眉を長めに描いたほうが、なんとなくしっくりくる気がしてたの」メイクはそんなに詳しくないんだけど、と笑いながら、スタイリストの女性が呟いたひと言にはっとさせられた。唇が『可愛い』なら、どこかで大人っぽくしなくちゃ。唇が『女っぽい』なら、どこかでシャープにしなくちゃ。無意識のうちに、そう思っていたみたい。だから、眉を長めに描くことで、可愛すぎない、女っぽすぎない、自分らしいバランスに調整したのだ、と。

昨日も今日も明日も、そして年齢を重ねても、この人の印象がずっと変わらずみずみずしいいのは、「さじ加減」にあると確信した。奥にあるのは、何があってもぶれない「らしさ」。つまり、こうありたいという「女性像」なのだと思う。そのうえで、ファッションやビューティで、もっと言えば立ち居振る舞いから心のあり方まで含めて、足したり引いたりしながら、自分という軸になじませる。持って生まれた感性と言ってしまえばそれまで。でも、聞けば聞くほど、確かな理論のように見える。感じて考える、感じて考える、その繰り返しで生まれる、感性×理論という絶妙な「さじ加減」……。だからこの人は、輝きを放っているのだ。

ロペエターナルの名曲スカートが時代を超えて愛される理由がわかった気がした。ウェストをシェイプし、足首を華奢に見せる、流れるようなシルエットは、このうえなくエレガント。黒? と見紛うほどの濃密なネイビーも、触れただけで手が感じる上質なハリ感も、どこかハンサム。女性性と男性性、可愛らしさと大人っぽさ、軽やかさと重厚感……。さまざまな要素が絶妙にブレンドされている。そんなさじ加減が形になったパーフェクトなスカートだから、どんな女性も輝かせる。時代を問わず、年齢を問わず、体型を問わず、私たちは、この一枚に心惹かれるのである。

まさにこれこそが、ロペが終始一貫、追い求める哲学だ。誰かに決められた女性らしさではなく、自らの意志で軽やかに生きていくために。女性ならではの美しさを、過剰な装飾や作為はなしに、際立たせる。ふと思った。これって、女性の最上級じゃない? と。 名曲スカートを纏ったら、今の自分がわかるような気がした。私ならではのさじ加減を楽しみたいと思う。それは、自分らしさを愛すること。女性である自分を愛することに違いないのだから。

松本 千登世

松本 千登世CHITOSE MATSUMOTO

客室乗務員、広告代理店や出版社勤務の経験を経た後、フリーランスの美容ライターに。
自らの経験をもとに語られる、エッセイや美容特集は常に世の女性たちの注目を得ている。
著書に、『美人に見える「空気」のつくり方 きれいの秘訣81』(講談社)や、
『結局、丁寧な暮らしが美人をつくる。今日も「綺麗」を、ひとつ。』(講談社刊)などがある。