SPECIAL SHORT ESSAY

SPECIAL SHORT ESSAY 女を育む、服

エディター・ライター 松本 千登世

ESSAY 11

ピンクを巡らせる、女たち

ピンク、ピンク、ピンク……。この春、女性たちはこぞってこの色に夢中になっている。濃淡の好みの違いはあれど、年齢を問わず、ファッションでも、メイクでも、どこかにピンクという色を取り入れたい、と胸躍らせているのである。作り手発信のトレンドなのか? 女性のなんとなくの気分なのだろうか? いや、そう単純ではないのだと、はっとさせられたできごとがある。

ある雑誌のページを創るための打ち合わせでのこと。スタッフ全員でそれぞれのピンク論を交わしていたときに飛び出した、このひと言……。 「私たち、人として、『ピンク』でありたいと思っている気がするの」。
えっ? どういうこと?  「『ピンクが似合う人』を超えて、『存在そのものがピンクのオーラを纏ってる人』になりたいと思ってる。『ピンクな人』が女性の最上級と思ってるんじゃないか、って」。

合点が行った気がした。確かに。そういえば、今、心惹かれる女性は、空気感も存在感もピンク。触れてみたい、見ていたい、一緒にいたい、また会いたい、そう思わせるのは、例えるならまさに、ピンクな女性なのだと。

黒のスタイリッシュさや強さに憧れた時代もあった。白のピュアさと軽やかさに癒された時代もあった。そして今。頑張りすぎない、でもちゃんと手間はかけている、そんな絶妙なバランス感覚がピンクという色に現れているのだろう。健やか、柔らか、清らか、穏やか、華やか、その証であるこの色に。だから誰もが、ピンクに心惹かれるのである。

そして、もうひとつ。そのページ創りに関わってくれた女性が、撮影のために集められた洋服や口紅のピンクを見て、ふとこう呟いたのを耳にした。 「ここ最近、ずっと忙しくて、疲れていたんだけど、ピンクのアイテムに囲まれていたら、なんだか、元気になってきたの。ピンクって、不思議な色ですね」

「ああ、大変」から「なんだか楽しい」に気持ちのベクトルが180度変わったのだと彼女。一説によると、ピンクは、視覚から女性ホルモンに働きかけるとも言われ、美肌効果や若返り効果まで囁かれている。ピンクという色のパワーは、私たちの想像以上に「絶対」。時代を超える真実なのだ。

ピンクは女を高める色。その高まりをまわりにまで波及させる色。一過性のトレンドでなく、タイムレスな美しさを生む色として、私たちは夢中になっているのである。
ただ、「ピンクさえ纏っていれば、幸せそうで愛されるんでしょ!?」と甘えると、一気に「野暮」になることも、心のどこかで気づいているだろう。ピンクは決して安心色や無難色じゃない。女としての自分を鍛え、整え、磨く色、そう覚悟してつき合って初めて「洗練」が手に入る。女が高まるってそういうこと。

ロペのピンクを纏ってほしいと思う。柔らかなピンクを、華やかなピンクを、自分にもまわりにも巡らせてほしいと思う。永遠に変わらない、女の最上級を目指して。

松本 千登世

松本 千登世CHITOSE MATSUMOTO

客室乗務員、広告代理店や出版社勤務の経験を経た後、フリーランスの美容ライターに。
自らの経験をもとに語られる、エッセイや美容特集は常に世の女性たちの注目を得ている。
著書に、『美人に見える「空気」のつくり方 きれいの秘訣81』(講談社)や、
『結局、丁寧な暮らしが美人をつくる。今日も「綺麗」を、ひとつ。』(講談社刊)などがある。